昨日みた夢の話

場所は昔通ってた中学だった。
その時点で夢だってわかった。

夢の中では朦朧としてたけど、そういう感覚だけはっきりとしていた。

一階から二階に上がる階段で、初恋の女の子とすれ違った。
バスケ部の男子を連れていた。


僕は浅く笑って横を通り抜けた。
向こうもこちらを自然なそぶりでかわした。


二階から三階に上がる階段で、二番目に好きになった女の子とすれ違った。
俺と仲の良い男友達を連れていた。


僕はクククっと笑って横を通り抜けた。
向こうはおしゃべりに夢中で、僕に気付いていないようだった。


三階から四階に上がる階段で

ある女の子とすれ違った。

隣には薄い影をつれていた。
何かを喋りながら笑ってる。
僕のことは気にもしていない。

「・・・」

僕はもはや笑えず、顔を伏せて今までと同じように通り抜けようとした。

相手はどかなかった。



談笑に夢中だったのか、意図的に邪魔したのかわからないけれど、僕は彼女と階段の手すりの間を身体を縦にしてすり抜けた。

視界から女の子が消え、四階の廊下に出た。
廊下は教室に面しており、休み時間なのか外に出てきた生徒達が思い思いに過ごしている。



あぁ、これは夢だ。

だって、僕の通ってた中学の校舎は三階建てだったからだ。
だから、厳密にはそこは僕の通ってた中学じゃなかった。

でもそんなことはどうでもよかった。

あの子の横を通り抜けた瞬間、どうにもできない感情が心の中で暴れ出した。

諦めなければならない。

次に行かなければならない。


けれども、そんなのはまっぴらごめんだった。



僕は頭を一瞬下にさげた。

それから

「ゥゥウウウウウウアアアアアアアアアア!!」

って、今まで出したこともないような声で叫んだ。

周りの訝しがる目線は気にならなかった。
僕の中で、そうしなかればならないという命令が出ていた。
叫べと脳が命令するまでもなく、僕の身体は叫んでいた。

「ゥゥゥゥゥゥゥゥ」

って唸りながら、僕は長い廊下を走りだした。

気持ち良いくらいの全力疾走だった。

何が面白いかって、自分の意志でそうしていることだった。

僕の夢というのはどこか、そうなることが必然、みたいな流れのようなものがある。

高いところから落ちて死んだり、人が僕を包丁で刺すとかいう夢は、僕の意識とは関係なく事態が進む。

けれども、この夢では僕自身が走りたくて、そうしていた。
ただそれだけのことがかなり重要である事のように思えた。




廊下の突き当たりは、大学の壁だった。
一枚30万円もするガラスの壁。
僕は左腕を突き出した。
指を手の甲と垂直になるようにピンと伸ばした。

要するにパーだった。


視界から逃げていく周りの目が笑っているように思えた。

「またやるのか」

「こりないやつだ」

たくさんの周りの目に、そう言われている気がした。

「つらかったね」

「がんばったね」

その中のごく少数にそう思われていることを感じた。


ガラスの壁が眼前に近付いた。
ガラスの向こうは真っ白で何も見えなかった。
眩しくて何も見えなかった。

僕は左腕を一度後ろにひいた。
その時、僕はまた一度頭を下げた。
僕は少し笑っていた。


「ァァァァァァアアアアアアアッ」


それから、左手を勢いよく前に出した。

張り手のような動作になった。
正直かっこ悪かった。

ガラスの壁が光った。

何もかもが真っ白になった。

ガラスの向こうには何も見えなかった。




・・・おきてた。





なんか、最後がどうにも中二くさい。

けれど、うまくいえないんだけど

自分の心の中が、少し変わった気がする。

良くなったのか、悪くなったのかはわからないんだけど。



こういう体験って、みんなしてるんだろうか。

わからない


わからない



けれども、とても面白い。