期待しない生き方

どうやら、他人に期待しない生き方が最も幸せになれる、
と偉いヒトが言っていたようだ。

確かに、他人に期待しても、ロクなことがない。

どれだけ他人に期待しても、裏切られるということはあるし、その期待が他人にとっては過度なプレッシャーとなって、苦痛となる場合もある。


俺はずっと、他人に期待して生きてきた。
能力のある人間には、その能力をいかした仕事を期待した。
好意をもって接してくれる女の子には、より親密な交流を期待した。


でも、そのどれもが期待通りに進んだわけじゃなかった。


人生なんてそんなもんだとヒトは言うし、
自分でもそういうものなんだろうと思っているけど、
俺が言いたいことはそういうことじゃない。


問題は、自分の誤りがうまくいったかもしれない、
自分の期待通りに運んだかもしれない出来事を、
無かったことにしていないか、ということだ。


そして、大体のうまくいかなかったことには、
俺自身の失敗が大きく絡んでいる。


俺はヒトに仕事をさせるのが苦手だ。

俺は女の人と接するのが苦手だ。


期待通りの結果まで、今を引っ張ることができない。
そうするとどうなるかというと、
自分がこの世で一番不幸な人間に思えてくる。


それではつまらない。
とてつもなくつまらない人生。
そして、つまらない人生というのは、とてももったいない。


そう思ったって、結局自分の思い通りにならない時点で、
とてつもなくつまらない人生には変わりない。

僕は本当に、自分の思い通りに人生をコントロールしたかった。
だから、親の言うとおりにするのは嫌だったし、
自分にとって都合の悪い出来事には、いつも我慢することができなかった。


人に期待しない生き方をするべきなのか。
期待すればするだけ、人は自分を裏切る。


期待するに値する人間というのはもちろんいる。
けれど、ごくごく少数の、きちんとするべきことをきちんとしてきた
人間だ。

きちんとするべきことを、きちんとしている人間が、結構この世では
少ない。


それだけで、期待しないほうが幸せ、という生き方が
まかりとおって
さも正しいであるかのように考えれて

この世がまたつまらないものになっていく。