魔王「我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」感想

長かった・・・10スレ以上に渡る小説なんてはじめて読んだ。


魔王と勇者、つまりJRPGの典型的なシナリオを別の観点から描く、というジャンルとして、魔王勇者、というものは以前からあった。


たいてい、片方が女の子だった!とか両方女の子だった!百合!とか、そういう切り口で短くてキャッキャウフフなお話が続くのが相場のように思っていた。


ただ、「我のものとなれ」とそれらの明確な違いはそのボリュームと、経済、戦略、戦術、における細かな描写と、クセの強いキャラ達の独特のセリフ回しにある。


魔族と人が生きていて、魔王と勇者がいるファンタジー世界なんだけど、現実世界のテクノロジーを魔王が持ち込んで、そこから人々の暮らしがどう変わっていくか、みたいな話を皮切りに、やがて歴史の分岐点としての戦争が始まる。


平和なときも、有事のときも、登場人物はたくさん物事を考えていて、シーンの多くは技術概念や状況説明に費やされる。


情景描写がなく、小説全てが2者〜複数間の会話と戦闘や身ぶり手振りをあらわす擬音で構成されているため、小説としての体を成していないと思う人もいるかもしれない。



だが、萌え要素がほぼギャグとして扱われる、もしくは皆無なシーンも少なくはなく、ほんとにキャラが際立っている印象で、要するに熱いキャラとかかっこいいキャラとかでぐいぐい読ませるという剛速球さが、最近自分がよみたかったものと合致していた。


長ったらしいセリフや、物語が途中で途切れてまた別の会話へ、という明確な結末を描写しない傾向などもあって、かなり読み手を選ぶと思うが、とにかくセリフが熱い。シーンが熱い。夢と希望と勇気と熱望と死と仲間と土壇場と執念。だいたいそれだけで満足しちゃう。泣いちゃう。



と、感想をかきながら他の人の解説よんでると自分の読みがあさいなーと思った次第なんだが、まぁいいや感想だし。そもそも、俺には物語における哲学的命題とかそういうのはよくわからん。


ただ、今までにままあったゲームシナリオや小説も描ききれなかったテーマを、2者間の会話だけで描いてしまった魔王勇者というのはすごいなー


ゲームクリエイターの方が書籍化に動いているのもうなづける。